2013-01-01から1年間の記事一覧

ぼくは14さい

十四歳になった。 僕に兄弟はいない。 両親もいない。 黒い家にひとりで住んでいる僕と幽霊のユリちゃん。ユリちゃんはとてもかわいいけど、幽霊なのだ。まるで雲みたいにふわふわ浮いていて 、纏うワンピースも卸したてのシーツみたいに白かった。雲みたい…

やがて来る変えられない結末 第1話

目を覚ましたとき、心地よい潮風が髪を撫でた。 明るい日の光が窓から私を射す。この光は朝の光だろうか。妙に心地よい。 そして思い出す。自分が崖から身を投げたことを。 あの時の感覚は何も覚えていない。人は身投げをした場合、風圧の関係で気を失ってし…

やがて来る変えられない結末 第0話

はじめはただの体質だと思っていた。 荒れた砂地で転んだときも、包丁で指の先を切ってしまったときも、人より何故か治りが早かった。 母が慌てて救急箱を持ってくるよりも先に、傷は消えていた。それも、跡形もなく、だ。 擦り剥けたはずの皮も、滲み出てい…

隣同士

隣同士が一番自然、なんてよく言ったものだと思う。 そりゃあ、僕とミスタは行動を共にしてきた時間が他の人と比べて多いのは確かだろう。 仕事、プライベート、それ以外にもミスタと過ごした時間は、日に日に増えてきている気がする。 彼自身も、僕の隣がも…

投資家レコーズ

夏だというのにこの部屋には冷房すら付いていない。 最新の技術が使われた馬鹿でかい屋敷だからか、異常に暑くなることはなく、断熱マットだとか、完璧な遮光カーテンやらが少しは効果を見せていた。 だが、先ほどまでの情事を終えた今、私の体は非常に火照…